この記事の要点
多言語地図は、対象者と言語を絞り、現地表示と一致する固有名詞、短い行動表現、言語に依存しにくい記号を組み合わせます。翻訳確認と経路確認を別工程で行います。
必要な項目から読む
まず押さえる論点
日本語地図の文字を機械的に置き換え、駅出口や建物名が現地表記と一致しない、文章が小さすぎる、記号の意味が伝わらない地図になる。
最初に対象言語と利用場面を限定する
外国人向けだからと多数の言語を一枚へ載せると、文字が小さくなり、経路線や入口が埋もれます。予約時に送るWeb画像、現地の看板、印刷した招待状など、地図を見る場面を決め、実際の来訪者に必要な言語を優先します。言語ごとに別版を作り、共通の経路線と記号を使う方法もあります。
対象者が旅行者なのか長期居住者なのか、地名をアルファベットで読めるかも伝え、単に「英語版」とせず利用条件から設計します。
固有名詞は翻訳せず、現地表示と照合する場合がある
駅名、出口名、道路名、建物名は、意味を自然に訳すより、現地看板や交通事業者が使う公式表記と一致させることが重要です。来訪者が案内図と目の前の表示を見比べられるよう、日本語表記を小さく併記する方法もあります。施設独自の受付名や通称は、正式名称との関係を整理します。
制作者には公式表記の出典や写真を渡し、機械翻訳だけで決めないでください。名称変更があり得る情報には確認日を付け、公開前に再照合します。
訳文を短くしても、必要な行動情報は削らない
日本語の長い経路説明をそのまま翻訳すると、言語によって文字量が増え、地図内に収まりません。まず原文を「出口Bを出る」「左へ曲がる」「正面入口から入る」のように一文一動作へ分けます。一方通行、階段のみ、営業時間外入口など、到着や安全に関わる条件は簡略化して消さないようにします。
矢印や入口記号を併用し、本文にも住所と要点を記載します。ピクトグラムは文化を越えて必ず同じ意味になるとは限らないため、必要に応じて短い文字を添えます。
翻訳確認と経路の現地確認は別の担当で行う
対象言語を読める人は表現の自然さや誤訳を確認できますが、施設の正しい入口や時間帯運用まで知っているとは限りません。逆に現地担当者は経路を確認できても、翻訳の不自然さに気づけないことがあります。翻訳確認者と施設側確認者を分け、それぞれの承認項目を用意します。
可能なら対象言語の初回来訪者に、口頭の補足なしで案内を試してもらいます。文字欠け、改行、数字、矢印の向きも、実際の端末や印刷サイズで確認してください。
依頼前に整理する順序
- 来訪者が使う言語と、想定する読み書きの程度を決める
- 駅、道路、施設、入口の公式多言語表記を集める
- 日本語原文を一文一動作の短い表現へ整理する
- 言語ごとに文字量を仮置きし、最小媒体で読めるか確認する
見積もりで確認したい条件
- 複数言語を一枚へ載せ、レイアウト調整が必要である
- 固有名詞や施設用語に専門的な翻訳確認が必要である
- 右から左へ読む言語や複雑な文字組みに対応する
- 避難・安全・医療等、誤訳の影響が大きい案内を含む
依頼時に渡す情報
- 対象となる来訪者、言語、利用場面
- 日本語の確定原文と各文の意図
- 駅・施設・道路等の公式多言語表記
- 翻訳者確認済みの訳文と未確認箇所
- 正しい経路、入口、受付の写真
- 使用媒体、寸法、言語ごとの版分け希望
- 使用するピクトグラムと出典・利用条件
- 翻訳確認者、現地確認者、公開日
公開・依頼前の確認項目
未確認の項目を残さず、該当しないものはその理由も記録します。
- 対象言語を利用者実態に基づいて絞った
- 固有名詞が現地の公式表示と一致している
- 一つの文に複数の行動を詰め込んでいない
- 色だけで経路や禁止事項を区別していない
- 翻訳者による言語確認と施設側の経路確認を行った
- フォントの文字欠けと実寸での可読性を確認した